AI短編小説 「ラッキージャグラースペシャルは犯罪です」

「大便」というあだ名で呼ばれるジジイが、刑務所から20年ぶりに娑婆へと出た。

外の空気を吸い込むと、街の景色は見覚えがあって見覚えがない。パチンコ屋の看板だけは、やけに光を放って彼を誘う。

「……懐かしいのう。ワシの青春は、ここで散ったもんじゃ」

フラリと入ったホール。そこに鎮座していたのは、かつての相棒に似た、しかし異様な輝きを放つ台―― ラッキージャグラースペシャル。

札に目を凝らした大便の目玉が飛び出る。

「な、なんじゃこりゃあ……!BIGが100枚?REGが25枚?しかも……コイン1枚2000円!?」

令和の残り香を背負った彼にとって、それは悪夢のような未来スペックだった。

だが、打ち始めればリールは牙をむく。最初の数千円で光る告知ランプ――。

「おおおっ、ペカッたァァ!」

そこから怒涛の連荘が始まった。次々に光るGOGOランプ、脳を直撃するような感覚。

そしてSNSに震える指で書き込む。

「なんと、ジャグ連が45連して一撃3000枚の2000円硬貨を獲得してしまいました!」

3000枚――600万円。

獲得音が鳴り響き、店内の空気まで震える。大便の背後には、信じられないほどのコインの山。

しかし、そこから流れは反転する。

出玉の余韻に酔って追加投資。光は途絶え、メダルは吸い込まれ、気づけば山は跡形もなく消えていた。

「ぐ……ぐぬぬ……ワシの600万……」

財布を覗けば、残るのは空気だけ、気づけば軍資金全てを飲み込まれていた。

その総額、75万円没収。

放心したジジイは、ヨロヨロとスマホを取り出し、最後の気力を振り絞ってSNSに書き込んだ。

「パチンコ式スロットルマッシーン賭博機は犯罪です。早速警察に通報しました」

――大便の未来は、告知ランプのように光ることは二度となかった。

「パチンコ式スロットルマッシーン賭博機は犯罪です。早速警察に通報しました」

SNSに書き込んだ直後、大便のスマホが震える。

画面に浮かぶのは「着信:警察署」。

「おお……早いのう。ワシの通報が、国を動かしたんじゃ」

期待に胸を膨らませて応答すると、受話口からは冷たい声。

「――あんた、ラッキージャグラースペシャル打ってた大便だろ?」

背筋が凍りついた。店員が警察に“逆通報”していたのだ。

「違法賭博は確かに犯罪だがな……プレイヤーも共犯だ」

数分後、パトカーのサイレンがホール前に響き渡る。

ジジイは必死に叫ぶ。

「ワ、ワシは被害者じゃ!75万も没収されたんじゃぞ!」

だが、署で待っていたのは冷酷な現実。

机の上に積まれた証拠写真――ジジイが45連チカチカで600万を抜き、狂喜乱舞する姿。

「おめでとうございます!ペカりすぎ!」と叫んでいる動画まで残されていた。

刑事は呟く。

「……これで被害者を名乗るのは、ちょっと無理があるな」

こうして大便は、娑婆に戻って一週間も経たぬうちに再び留置場の鉄格子を見上げることになった。

彼の呟きは、SNSにひっそりと残り続ける。

「ペカリは光、しかし光に近づく者は焼かれる」